2012年〜2024年、フランスでの展示歴
- Yoshimi Katahira
- 5 日前
- 読了時間: 3分
マンガのワークショップや講座を始めた後、「原画を一般の方々に見せるため、作品を展示しませんか」という提案を受けました。

約10年間まったく絵を描いていなかった私は、最初は乗り気ではありませんでした。
そんなある日、教室に参加していた子どもたちとの会話を通して、 彼らは私とは全く違う視点でマンガを見ていることに気がつきました。
話すうちに、私たちは単に文学的な背景や参照点を共有していないことに気づきました。
西洋美術はしばしばギリシャ神話や聖書に由来しますが、マンガは主に日本神話や昔話を背景に持っていることが多いのです。
そこで私は、マンガの登場人物や物語構造を通じてそのルーツの一つをマンガ好きの子供たちに知ってもらおうと、日本の昔話の中でも特に有名な「鶴の恩返し」を題材にすることに決めました。
ただし、コマ割りや吹き出しを使った従来のマンガの形式ではなくしたかったのです。
というのも、日本式の右から左への読み方に慣れず、マンガを読むのが難しいという人々に多く出会ってきたからです。

そこで私は、日本の紙芝居に着想を得たアプローチを選びました。
主催者の要望もあり、他の昔話も少しずつ追加していきました。

2014年に「鶴の恩返し」を初めて発表してから、これまでに5つの昔話と4つの日本神話を制作し、2024年までに20回以上展示を行ってきました。
その準備を進める中で強く思い出されたのが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、私が日本でマンガ家のアシスタントをしていた時期の記憶でした。
初めてプロ用の紙に手描きされた原稿を目にしたときのことは今でも鮮明に覚えています。
線の美しさ、細部の繊細さ、モノクロの迫力、ホワイト修正の後…印刷されると消えてしまうこれらの要素に、私は深く心を動かされました。
私が展示を通じて伝えたかったのは、まさにそのときに感じた感動です。
この作品群を制作するにあたっては、あえて「ナワアミ」や「カケアミ」といった、デジタル時代にはほとんど手で描かれなくなったマンガ技法を用いました。 そ

それは、マンガの歴史と、それを築いてきた人々への敬意を込めた表現でもありました。

展示会という空間を通して、普段マンガを読まない人、マンガに偏見を持っている人と触れ合うことができたのも、私にとって良い経験となりました。
作品を作っていく中で、日本人としてのアイデンティティを考えるようになり、このことがアーティストとして新たな道を歩むきっかけになったのです。
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